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Idein 10周年記念ブログ:代表・中村晃一が語る過去と未来

10th Anniversary (1)

10年という歳月を、たった一言で表すのは難しい。
創業当初に思い描いた夢は、技術としても社会としても、まだ誰も触れたことのない領域にありました。
その夢を形にするまでの道のりは決して平坦ではありませんでしたが、今、ようやく「やり続けてよかった」と心から思えます。

この10年でIdeinが取り組んできた挑戦と、社会の中で果たせた役割。
そして次の10年に向けて、私たちがどこへ向かうのか。
この節目にあたり、代表としての想いを綴りました。

目次

1. はじめに:10年を振り返って
2. Ideinを立ち上げた理由
3. 社会実装という転機
4. 技術とともに進化する
5. Ideinの強み
6. AIの未来
7. これからの挑戦
8. 最後に:支えてくださった皆様へ

はじめに:10年を振り返って

10周年を迎えた今、正直な気持ちを聞かれたら「とにかく長かった」という言葉が真っ先に浮かびます。
同時に、それでも「やり続けてよかった」と思える――そんな10年だったとも感じています。

創業当時は、まだAIという言葉が今ほど世の中に浸透していませんでした。
私自身も、「物理空間をデータ化し、その上に新しい産業を築く」という、壮大ともいえる理想を抱いていたに過ぎません。
それが今では、ファミリーマート様や通信キャリア様をはじめ、私たちの技術が実際に社会の中で使われ、新たなビジネスの土台になりつつある。
そうした現実を目の当たりにするたびに、これまでの努力が報われたような気がします。

何よりも強く感じるのは、「あきらめずに続けてきたこと」の尊さです。
テクノロジーの進化や社会の変化に左右されながらも、ひとつの信念を持ち続けてきたことが、今のIdeinの血肉となっている――そう思っています。

Ideinを立ち上げた理由

創業当時、私が抱いていたのは「ソフトウェアの力で物理空間を変えていく」というビジョンでした。
インターネットの世界ではソフトウェアによる革新が当たり前ですが、実際の空間、つまり私たちが暮らす現実の社会においては、ソフトウェアが活躍する土壌が整っていなかったのです。

当時は、深層学習という技術に基づくAIやそれを使ったサービスが生まれ始めた頃で、それを物理空間向けに活用するためのハードウェアやインフラは未成熟でした。
そんな中で私は、物理空間のあらゆる場所でソフトウェアを動かし、AI技術によって様々なデータを計測し、制御する、そうしたテクノロジーの基盤づくりにこそ社会的な意義があると感じたのです。

そうなれば、現実世界の様々な産業や仕組みのソフトウェアによる再構築が進み、進化が加速し、より豊かで便利でエキサイティングな社会に近づくはずだ――。
この思いがIdeinという会社を生み出す原動力になりました。

10年経った今、ようやくそのビジョンが「部分的に現実になってきた」と感じられる瞬間が増えてきました。
従来ソフトウェアが届かなかった領域で、私たちのプラットフォームが新たな産業の立ち上げを支えている――それは、かつての夢が、少しずつ社会の中でかたちになっているということ。
まだまだ道のりの途中ではありますが、確かな手応えを感じています。

社会実装という転機

この10年で最も印象に残っている出来事は何かと問われたら、ファミリーマート様や大手通信キャリア様などの大規模なお客様に、正式採用された瞬間を挙げます。
それは、私たちのプロダクト「Actcast」が、PoC(実証実験)にとどまらず、お客様のビジネス・オペレーションの中で「本当に使われるプロダクト」になったという証でした。

Actcastの開発には非常に長い時間がかかりました。
創業当初は「1〜2年で完成させる」という青写真を描いていましたが、実際には5年以上の歳月を要しました。

その間、多くのエンジニアが力を尽くし、何度も試行錯誤を繰り返してきました。

だからこそ、あの瞬間――
「このプロダクト(Actcast)は本番の現場で、信頼して使えるものだ」と認めてもらえたことは、私にとって何よりも嬉しく、報われた経験でした。

実証実験で終わるプロジェクトが多い中、私たちは社会の本流に技術を届けることを目指してきました。

そして今、それが一部ではありますが現実となり、「信頼される製品」として導入いただけるようになった――これは私たちにとって、大きな転機であり、誇りでもあります。

今後もこうした「実際に使われる」瞬間が、毎年のように、さらに増えていくことを願っています。それこそが、私たちが社会に対して果たせる価値であり、存在意義だと考えています。

技術とともに進化する

創業時、AIの進化は速いだろうと予想していました。
しかし、ここ数年の進化――特に生成AI(Generative AI)の登場は、当時の想像をはるかに超えるものでした。

Ideinという会社は、AIやエッジコンピューティングといった先端技術の「裏側」を支えるインフラや基盤技術を提供する立場です。

そのため、私たちは常に新しい技術に対してアンテナを高く持ち、「誰よりも早く触って、使いこなすこと」を自分たちの責務と考えています。

たとえば、創業初期には存在すらしていなかったAI半導体を早期に注目し、イスラエルのスタートアップ「Hailo」のチップを採用したエッジデバイス「ai cast」をアイシンと共同開発しました。これは日本国内でも先進的な事例となりました。

また、最近では生成AI(LLM)をエッジに載せる研究開発にも挑戦しています。
クラウドだけでなく、リアルな現場で、LLMが画像解析や意思決定を担う――そういった“実世界で使える生成AI”の先駆けとなるべく、顧客企業との実証も着実に進んでいます。

このように、私たちは単に「技術を知っている」だけでなく、それを製品化・事業化できるスピード感を重視してきました。
それこそが、Ideinの強みであり、これまでの競争力の源泉でもあると自負しています。

世の中の技術が激しく変化する中で、私たちもまた変化し続けてきました。
そしてこれからも、変化の先頭を走る存在であり続けたいと考えています。

Ideinの強み

現在のIdeinの最大の強みは、実際に社会の中で「使われている」ことだと考えています。
特にファミリーマート様や大手携帯キャリアショップ様のような全国規模のクライアントへの大規模な導入実績は、単なる技術提供にとどまらず、社会実装のステージまで踏み込んでいる証です。

AI技術そのものは、素晴らしい技術を持つ企業が世の中にたくさんあります。
しかし、本当に価値が生まれるのは、その技術が「誰かの課題を解決する形で届けられたとき」です。
そこには、テクノロジーだけではなく、事業化の知見、顧客理解、運用ノウハウが不可欠です。

私たちは、創業以来そのすべてを積み上げてきました。
PoC止まりのプロジェクトではなく、“本番で動く”ソリューションをいかに提供できるか。
そのために必要な技術、組織、チーム、プロダクト――すべてに本気で取り組んできたからこそ、大規模な現場でも信頼して使っていただける状況が生まれたのだと思います。

その結果として、私たちは他社とは異なるフェーズにいるという自信があります。
単なる「技術の新しさ」を競うのではなく、本質的な価値を届ける力を武器にした“次元の違う戦い”へと進んでいる。これこそが、今のIdeinの現在地であり、私たちがこれからさらに広げていくべき強みだと考えています。

AIの未来

創業当時、AIといえばほとんどがクラウド上で動かされるものでした。
”エッジAI”技術に取り組む会社は、国内外を見渡してもまだ僅かでした。
その中に私たちIdeinも含まれていたわけですが、いま振り返ると、それは非常に先進的な取り組みだったと思います。

そして現在、状況は大きく変わりました。
物理空間――つまり「実世界」でAIを活用するためには、クラウドではなく、現場(エッジ)で処理する事が当たり前になっています。
その結果、いまや多くの競合企業もエッジAIに注目し、主戦場がこの分野へとシフトしています。

さらに大きな転換点となったのが、生成AI(Generative AI)の登場です。
この技術の進化によって、人間の知的労働を現実的に代替できる時代がいよいよ到来しました。
自然言語処理や画像理解だけでなく、将来的にはロボティクスの制御などにも応用が広がっていくはずです。

私は、これから先の社会において、人間の知的・肉体的労働の一部、ないしは大半がAIとロボットに代替されるとともに、そのスピードは我々が想像するよりはるかに早いと確信しています。
その未来の中で、現場で直接AIが動作する、スマートなデバイスの存在が不可欠です。

そうした世界の実現に向けて、私たちIdeinは引き続き、エッジでAIを動かすための最適なインフラを提供し続けたいと考えています。
そして、次世代のAI社会を下支えする“見えないエンジン”として、社会に貢献していきたいと強く思っています。

これからの挑戦

私たちは創業以来、「ソフトウェアが物理空間を変える未来」を信じてきました。
そして今、そのビジョンをより現実的な社会変革として、次のステージへと進めていきたいと考えています。

私はIdeinを、「日本のソフトウェア産業をリードする存在」に育てたいと思っています。
日本には世界に誇れるハードウェア産業や製造業の基盤がありますが、ことソフトウェアに関しては、どうしても国際的な存在感がまだ十分とはいえません。

しかし、いま起きている「エッジAI × 生成AI」の流れ――これはまさに、ハードとソフトの融合によって初めて価値が生まれる分野です。
だからこそ、ハードの強い日本が、ソフトを自ら生み出し、武器にしていくことが、これからの国際競争力に直結すると考えています。

とはいえ、日本の大企業が自ら率先してソフトウェア事業を新たに立ち上げるのは、構造上も文化的にも、まだまだ難しい面があります。
だからこそ、私たちのようなスタートアップが、率先して火をつける必要があると感じています。

Ideinはこれから、大企業の持つアセットやリソースを巻き込みながら、そのエンジンとなり、共に新しいソフトウェア産業を創り出していく存在になっていきたい。
そして、日本から世界に誇れるソリューションや事業を育てていく――そんな挑戦を、この次の10年で必ず実現させたいと思っています。

最後に:支えてくださった皆様へ

Ideinの10年は、決して順風満帆な道のりではありませんでした。
むしろ、山あり谷あり――ときには「もう続けられないかもしれない」と感じた瞬間が何度もありました。

それでも、ここまで来ることができたのは、支えてくれた多くの方々のおかげです。
資金的な支援をくださった投資家の皆様、最初の導入を決断してくださったお客様、そして、困難なプロジェクトの中でも信じてついてきてくれた社員の皆さん。
心から感謝しています。

10年を迎えた今、私たちがようやく社会的にインパクトのある事業を実現し始めていると実感しています。
むしろ、これからが本番――そんな気持ちです。

これから私たちは、さらにスピードを上げ、事業も組織もスケールさせていきます。
そのためには、これまで以上にお客様・パートナー・社員の皆様との密な協力が不可欠です。

Ideinが生み出す技術や仕組みが、社会の中でしっかりと価値を生み続けられるように。
そして、それが日本や世界にとって必要とされる存在となれるように。
これからも努力を重ねていきますので、引き続きのご支援・ご期待をどうぞよろしくお願いいたします。

Idein株式会社 代表取締役/CEO 中村 晃一

 

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