Idein CEOの中村です。当社は2023年3月末にラスベガスで開催された「ISC West 2023」に出展企業として参加しました。今回のブログではその時の様子についてレポートします。
📷ISC West 2023 会場の様子①
最初にISC Westがどのような展示会なのか軽く触れたいと思います。ISC Westは米国最大規模の総合セキュリティ見本市で、概要は以下の通りです。
名称 | ISC West 2023-International Security Conference & Exposition |
会期 | 2023年3月28日(火)~31日(金) |
会場 | Venetian Expo(米国 ラスベガス) |
📷ISC West 2023 会場の外観
今回、当社はHailo社のブース内に出展し、今年の2月に国内で発表したエッジAIカメラ「ai cast(アイ キャスト)」の展示とデモンストレーションを行いました。
出展の背景には、主に3つの理由がありました。
以下、順に説明します。
まずは第一の目的であるHailo社との連携の強化についてです。Hailo社はイスラエル発のスタートアップでAI専用のプロセッサを独自開発している企業です。高性能、高電力効率、小型化の面で非常に優れており、「ai cast」にはHailo社のAIアクセラレータチップ「Hailo-8」が搭載されています。今回、Hailo社よりお声がけいただき、「ai cast」の展示・デモを行う貴重な機会を得ました。
(プレスリリース「Idein、アイシンが開発するエッジAIカメラ「AI Cast」にエッジAI技術を提供」はこちらよりご覧いただけます。)
第二の目的は、防犯分野への参入です。私たちは2023年3月末に、広島にあるCIA株式会社と業務提携を結び、万引きをはじめとする不明ロス対策のソリューションで協業することを発表しました。
(プレスリリース「IdeinとCIA社、店舗の不明ロス “7割” 削減に成功した防犯ソリューションを大規模展開」はこちらよりご覧いただけます。)
ISC Westは国際的なセキュリティ見本市であるため、この分野の動向を調査し、新たなパートナーを発掘する場として最適と考えました。
そして第三の目的は、海外市場、特に北米市場進出に向けた動向調査です。私たちは創業当初から海外市場を視野に入れてプロダクト開発や事業戦略を立てています。国内ではすでに多くの企業にパートナーとして参画いただいておりますが、ISC Westを通じて、海外進出に最適なクライアントやパートナーの候補を増やすことを目指しました。
以上、3つの目的でISC Westに参加しました。今回の展示会では非常に有意義な経験が得られたため、参加して良かったと感じています。
ここからは、会場の様子を振り返りながら私が感じたことをレポートしていきます。
📷当社が出展したHailo社ブースの様子
展示会場を回ると、セキュリティ技術のトレンドが「ハードウェアからソフトウェアへ」シフトしていることを顕著に感じました。従来のセキュリティソリューションはNVR(ネットワークビデオレコーダー)などのハードウェア製品が主流でしたが、ここ数年のトレンドはソフトウェアサービスを提供する企業が増えている印象です。
例えば、今回の展示会ではVMS(ビデオマネージメントシステム)を出展している企業が多く見られました。特に画像解析技術を用いて監視カメラの映像をリアルタイムに分析し、侵入者を検知したり、不審な物を持っている人を検知したりするなど、ソフトウェア・ソリューションで差別化を試みている企業が多くありました。
この変化の背景には、ハードウェア市場が成熟し、ハードウェアでの差別化が難しくなっているということが考えられます。たとえば従来のNVRでは「大容量」とか「長時間録画可能」などのハードウェアスペックで差別化していましたが、技術革新によりストレージや半導体の低価格化と高性能化が進んだことで、それらの要素での差別化は難しくなっています。
そこで、ハードウェアに搭載するソフトウェアや、ソフトウェアによるサービス、およびソリューションの開発に取り組む企業が増えているのが現在のトレンドだと感じました。
📝ポイント:「まだまだ道半ば。とりあえずAIを導入した“クラウド型AI”が多数」
上述したように、展示全体としてソフトウェア面をアピールした展示は多かったものの、ほとんどが高額なサーバーやクラウドを用いたAI画像解析を行うタイプのAIカメラの展示やデモでした。
AI機能についても特定のエリアで人間の侵入を検知するといった単純なAI機能がほとんどでした。会場で実際にヒアリングしてみると、例えば不審者とそうでない人物を区別したい場合、こうした機能だけでは不十分だという声が多く聞かれました。確かに不審者と家族や宅配業者も一律検知して毎回同じようにアラートが出てしまうと、オオカミ少年のような状況になってしまい、アラートを正しく運用できません。
今回当社が展示した「ai cast」はこうしたニーズにも十分応えられる可能性を持った製品だったため、会場でも非常に興味を持ってもらえて、好反応でした。
📷会場で説明員として立つ私(中村)
今回当社はHailo社のブースの一角で、Hailo社のAIアクセサレータチップを搭載したエッジAIカメラ「ai cast」の展示とデモを行いました。
ここで、当社がアイシンと共同開発したエッジAIカメラ「ai cast」について、改めて簡単にご紹介します。
「ai cast」は当社が株式会社アイシンと共同で開発したエッジAIカメラです。高度なAI処理も当社の高速化技術とHailo社のAIプロセッサによって手のひらサイズのコンパクトなカメラ内で実行されます。クラウドにアップロードされるのは個人が特定されない、解析結果のテキストデータのみであり、通信量が大幅に削減できるとともに、プライバシーにも配慮した運用が可能です。
手のひらサイズの多くのエッジデバイスでは、性能が足りないため、例えば人物を検出して四角形の枠を付けるという程度の解析しかできないものが多いですが、ai castのインスタンス・セグメンテーションデモでは人やペットボトル、スマートフォンなど80種類の物体をリアルタイムに検出し、形や輪郭の部分を精密に塗り分けて識別できます。他にも様々なAIを開発し動作させることができます。
さらに、ai castの大きな特長として、当社の開発・運営するエッジAIプラットフォーム「Actcast」と連携済みであることも挙げられます。これにより、各地に散らばったエッジデバイスを遠隔で一元管理することが可能です。この点もセキュリティ分野における活用という点において非常に強力な武器となります。
また、エッジAIカメラ自体は、車載カメラシステムなどを手がけているアイシン製であることから、高品位・高品質なものになっています。
展示会のブースでは、ai castを展示し、「インスタンス・セグメンテーション」というAI機能を紹介しました。
同じものを当社の公式YouTubeに載せているのでそのデモ動画を貼っておきます。
実際のデモでは、ブースの前を通り過ぎる人たちを検出・解析し、高いパフォーマンスを見せることができました。このため、デモを通してai castの高いパフォーマンスをアピールすることができたと感じています。
来場者の反応は、私たちの技術を実際に目の当たりにして皆さん一様に驚かれていました。当社の技術がセキュリティ分野においても有用であること、また、私たちのAI技術が持つ潜在的な価値を広く認知してもらえたのではないかと感じています。
📷来場者にai castやデモについて説明する様子
今回のISC Westへの参加を通じて、防犯セキュリティ分野においてAIの活用が少しずつ始まっているフェーズであると感じました。既に飽和しているマーケットではなく、まだまだ成長が見込める市場であると思います。そして、当社の技術がこの市場における競争力を持っていることも確認でき、大変収穫の多い展示会となりました。
📷ISC West 2023 会場の様子②
今後は、セキュリティ分野に展開する最初の一手として、CIA社と連携しながら国内における万引きをはじめとした不明ロスの撲滅に取り組む考えです。その後国内におけるセキュリティ分野の実績を糧に北米に進出し、市場シェアを獲得していくことを目指しています。
今回のISC Westで得られた知識と経験を活かし、防犯セキュリティ分野でのAI技術の普及に当社としても取り組んでいく意を新たにしました。
以上で今回のブログは終わります。
このブログの内容やエッジAIカメラ「ai cast(アイ キャスト)」についてより詳しくお聞きになりたい方は是非、以下のお問い合わせボタンよりお気軽にご連絡ください。